「空気に身を預ける」ダイニングチェア
倉俣史朗 Apple Honey（アップルハニー）

「重力」「光」「空気」
「夢」「記憶」「時間」

そんなキーワードで語られる詩的な作品を数多く残した伝説的デザイナー 倉俣史朗氏（1934-1991）。
ミッドセンチュリー期に頂点を迎えたモダニズム思想が変容し始め、ポストモダンの時代を迎える1960〜1980年代を駆け抜けるように創作活動を行いました。

ガラスやアクリル、エキスパンドメタルなど透過性のある素材使いや、ヘアライン加工したアルミ材にアルマイト処理を施した「霧のような表情」。
それらを通じて表現された浮遊感あふれる「夢を見ているような」デザインは、世界的に高い評価を得ています。

安藤忠雄氏が1985年に設計したカフェレストトラン、モン・プティ・シュのためにデザインされたApple Honey（アップルハニー）。
細いスチール製フレームにひじ掛けと背もたれを兼ねたステンレスパイプが差し込まれた軽快な一脚です。
片持ち構造の背もたれが繊細にして「重力を無視した存在」であるかのように映り、独特の詩情を感じさせます。

ブラック×ステンレスのカラーコンビネーションは同じくモン・プティ・シュのためにデザインされたテーブルでも採用されました。
強い存在感を感じさせる「ブラック色」に対して鏡面仕上げの背もたれは背景に溶け込み、その存在感を無くすことで、座っている人はまるで「見えない空気の背もたれ」に身を預けているかのようです。

座面が脚から2センチほどセットバックし、クッションもしっかりと詰められているので、存外に掛け心地がよいのもアップルハニーの魅力。
普段使いのできる倉俣作品です。

倉俣氏は家具を単なる「機能的な道具」としてではなく、「哲学的な考察の対象」または「家具としてもつかえるオブジェクト」と捉えました。
その作品は「デザイン」「アート」といった枠組みを超えて、各国の美術館・コレクターに愛され続けています。






 

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デザイン : 倉俣史朗｜Shiro Kuramata
ブランド : ギャラリー田村ジョー
サイズ・重量 : W480×D470×H720mm（SH420mm）
材質 : アーム／ステンレス、シート／レザー、脚／スチール
生産国 : Japan